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東京高等裁判所 平成6年(ネ)3090号 判決

東京都目黒区中町二丁目三二番四-一〇一号

控訴人

篠塚賢二

東京都大田区中馬込一丁目三番六号

被控訴人

株式会社リコー

右代表者代表取締役

浜田広

右訴訟代理人弁護士

野上邦五郎

杉本進介

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、控訴人に対し、金一八三万四〇〇〇円及び内金五三万四〇〇〇円に対する昭和五三年一月一日から、内金一三〇万円に対する同年八月一五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

四  第二、三項につき仮執行宣言

第二  事案の概要

次のとおり附加訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」欄の記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決添付目録(一)について

1  一枚目表五行目の「図である。」を「図である(下部表示参照)。なお、上部表示のものは、下部表示の正面図における長さ切断用カッターの側面を示す。」と改める。

2  一枚目裏一行目の「ロール紙」を「ロール紙。巻回テープ類であるロール紙cは、本体a+eのロール紙cが支持されている定位置から引き出されて順次切断された後、本体a+eから外出する。」と改める。

3  一枚目裏六行目の「装着されている。」の次に「なお、左右に突出した緩挿軸61の部分の長さを除く回転刃22自体の部分の長さは、ロール紙cの幅よりも長い(第2図-cの上部表示のもの参照)。」を加える。

4  一枚目裏一一行目の「回転式ツマミ」を「回動式ツマミ」と改める。

5  三枚目表三行目の次に行を改めて「本製品は、本体a+eのロール紙cが支持されている定位置から引き出されて順次切断されるロール紙cのローラ56、55が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る」を加える。

6  三枚目表九行目の「一体となった」の次に「カッター装置付きテープホルダーの」を加える。

7  四枚目裏一一行目の「本体a+eにおいて」を「本製品は、本体a+eにおいて」と改める。

8  五枚目表二行日]の「幅截断カッター」を「幅截断用カッター」と改める。

9  五枚目表三行目の「ができる。」の次に「(右可能な切断は、「(点で交わる)直角切断」である)。」を加える。

二  原判決添付目録(三)について

1  一枚目表六行目の「ロール紙」を「ロール紙。巻回テープ類であるロール紙1は、本体57のロール紙1が支持されている定位置かち引き出されて順次切断された後、本体57から外出する。」と改める。

2  一枚目表八行目の「装着されている。」の次に「なお、左右に突出した緩挿軸59の部分の長さを除く回転刃3自体の部分の長さは、ロール紙1の幅よりも長い。」を加える。

3  一枚目表一一行目の「回動式ツマミ」を「幅截断用カッターの回動式ツマミ」と改める。

4  二枚目裏一〇行目の次に行を改めて「本製品は、本体57のロール紙1が支持されている定位置から引き出されて順次切断されるロール紙1のローラ対55が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る」を加える。

5  三枚目表五行目の「一体となった」の次に「カッター装置付きテープホルダーの」を加える。

6  三枚目表九行目の「回動」を「回転」と改める。

7  四枚目裏六行目の「本製品は、」の次に「本体57において、」を加える。

8  四枚目裏八行目の「幅截断カッター」を「幅截断用カッター」と改める。

9  四枚目裏九行目として「(右可能な切断は、「(点で交わる)直角切断」である)。」を加える。

第三  争点に対する判断

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は、原判決四枚目表七行目の次に行を改めて次のとおり附加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第三争点に対する判断」の欄記載のとおりであるから、これを引用する。

「控訴人は、〈1〉原判決添付目録(一)ないし(三)には、本件実用新案権の侵害に無関係である複写機構は含まれていないから、被控訴人製品(一)及び(二)は、いずれも乾式電子複写機とはいえず、同(三)は、乾式ジアゾ複写機とはいえない、〈2〉本件考案の構成要件である『巻回テープ類』とは、接着テープ及びこれに類するものを意味するところ、『類する』とは『似ている』ことをいうから、前記各製品におけるロール紙は、本件考案の「巻回テープ類』に該当する、〈3〉本件考案は、『操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅截断用切刃7を固着する』のであるが、回転刃の装着されている位置を考慮すると、被控訴人製品(一)及び(二)の長さ切断用カッター部分の構成における回転刃22の装着されている『緩挿軸61』及び幅截断用ヵッター部分の構成における上・下回転刃49・48の装着されている『緩挿軸45・44』、また、被控訴人製品(三)の長さ切断用カッター部分の構成における回転刃3の装着されている『緩挿軸59』及び幅截断用カッター部分の構成における上・下回転刃49・48の装着されている『緩挿軸45・44』は、いずれも、本件考案の構成要件である『緩挿軸8』に相当するというべきである、〈4〉要するに、被控訴人製品(一)ないし(三)は、本件考案の構成要件である「カッター装置付きテープホルダー』であることも、その余の構成要件もすべて充足し、かつ本件考案の作用効果と同一の作用効果を奏するから本件実用新案権の技術的範囲に属する、と主張する。

しかしながら、前記のとおり、被控訴人製品(一)及び(二)は、いずれも乾式電子複写機及び専用オプション装置であり、同(三)は乾式ジアゾ複写機であって、原判決添付目録(一)ないし(三)は、それらの製品の一部であって同製品に装備されているロール紙支持機構の構造、作用等を摘示したものであることは、各目録の記載内容及び弁論の全趣旨に徴し明らかであるから、控訴人の主張〈1〉は理由がない。

また、前記各製品におけるロール紙は、その用途からみて本件考案の『巻回テープ類』における『テープ』に類するものに該当するとはいえないのみならず、これらの製品に装備されたロール紙支持機構が『カッター装置付きテープホルダー』の概念に含まれないこと、前記のとおりであるから、控訴人の主張〈2〉も理由がない。

また、回転刃の装着されている位置を考慮すると、本件考案の『緩挿軸8』に相当する軸は、被控訴人製品(一)及び(二)の『軸61』、同(三)の『軸59』であって、被控訴人製品(一)及び(二)の『緩挿軸45・44』、同製品(三)の「緩挿軸45・46』がいずれも本件考案の『緩挿軸8』に相当するということはできないから、控訴人〈3〉の主張も失当である。

さらに、以上に述べたとおり、被控訴人製品(一)ないし(三)は、いずれも本件考案の構成要件を充足しないのであるから、控訴人〈4〉の主張も理由がない。」

第四  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 関野杜滋子 裁判官 田中信義)

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